フリーランスの仕事をしていて、いざ請求書を作成するとき、もしくは請求書をフリーランスの人からもらった時など、源泉徴収するのかしないのか?どう対応してよいかわからないことがありませんか?
そもそも源泉徴収の基本的な仕組みを知る機会ってなかなかなかったような気がします。
まずは、その仕組みから、そして計算まで、簡単に理解できるようにまとめてみました。
目次
フリーランスで源泉徴収される職業や報酬とは?
源泉徴収の仕組み
そもそも源泉徴収とは、仕事を発注してお金を支払う側の法人や人が受注者(源泉徴収の対象者)へ支払う時に税金を支払額から引いて国に納めることです。給与の場合も同じくお金を支払う側が従業員へ支払う際に税金を引いて国に納めることです。
もし、こういった制度がなかったら、収入をもらった全員が確定申告して税金を納めなければならなくなります。それって国からしたら本当に納めてくれるかという不安もありますし、作業が増えますし、非効率ですよね?ですので、お金を支払うタイミングで税金額をだいたい引いてから支払ってね、という制度になります。(ざっくりいうと)ですので、給与所得者はこの「だいたい支払った税金」を年末調整で確定し、フリーランスは確定申告で税金を確定させるのです。
源泉徴収の対象となるフリーランスの職業や報酬とは?
源泉徴収の対象となる範囲に関しては、実は職業別に記載されているわけではありません!
支払う内容に関して列挙されています。
ですので、フリーランスで範囲に当てはまらなさそうな職業であっても、かかってくる内容の報酬を得ていたら源泉される対象となります。
例えば、営業のコンサルタントは対象となりませんが、この営業のコンサルタントをしている人がカメラマンの業務を行った場合はその撮影料に関しては源泉徴収の対象となるわけです。
基本的に請求書の「名目」では判断せず、実態を見て判断されますので、注意が必要です!
範囲はわかりやすく抜粋すると以下になります。
所得税法第204条第1項第1号の報酬・料金
・原稿料、講演料、挿絵の報酬、写真の報酬、作曲の報酬、デザインの報酬、校正の報酬など
(懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金に関しては1人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば源泉徴収はされません。)
もっともフリーランスでありそうな仕事内容ですね。ライター、カメラマン、イラストレーター、デザイナーなどはこれにしっかり入ってきます。
・技芸・スポーツ・知識等の教授・指導料
・翻訳、通訳の報酬・料金
・著作権の使用料等
所得税法第204条第1項第2号の報酬・料金
・弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・弁理士・社労士・行政書士・建築士・不動産鑑定士などの特定の資格を持つ人に払う報酬・料金
所得税法第204条第1項第3号の報酬・料金
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
所得税法第204条第1項第4号の報酬・料金
・プロの野球選手・サッカー選手・テニス選手、モデル、外交員などに支払う報酬・料金
所得税法第204条第1項第5号の報酬・料金
・映画・演劇・テレビ放送等の出演等の報酬・料金やプロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
所得税法第204条第1項第6号の報酬・料金
・ホステス(バーなどに勤める)、バンケットホステス(宴会等で客に対して接客を行う行為)
所得税法第204条第1項第7号の報酬・料金
・プロ野球選手の契約金など、一時的に支払う契約金
所得税法第204条第1項第8号の報酬・料金
・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
ここに記したもの以外にも細かく分類されている表が国税庁のHPにありますので、参考にしてみてください。また、対象になるかならないか、判断しかねる場合は電話にて税務署へ問合せすると教えてくれますよ!
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2009/data/05/index.htm
逆に一般的に源泉徴収が不要なフリーランスの代表的なものは、大工さんや技術系の職人、物販や製造業に携わるような仕事になります。
源泉徴収の計算方法
基本的に源泉徴収される金額は
100万円以下の部分の税額は 支払金額×10.21%
100万円超の部分の税額は (支払金額―100万円)×20.42%
です。
例えば150万円の原稿料を請求する場合の請求書には
(150万円―100万円)×20.42%+102.100円=204,200円を源泉徴収額として記載しておくと先方にもわかりやすいです。実際、自分に振り込まれる額は150万円-204,200円の1,295,800円となります。
請求額は150万円で構いません。
※源泉徴収の計算方法が違う報酬もありますので、詳しくは国税庁のHPをご確認ください。例えば、司法書士、外交員、ホステスの報酬、広告宣伝のために支払う賞金等など
源泉徴収をする側の人は?(源泉徴収義務者)
フリーランスでも人を雇って給与を支払った場合、その支払うタイミングで、その支払う金額に応じた所得税及び復興特別所得税(以下所得税)を差し引いて支払う決まりがあります。そして、その差し引いた所得税は通常は給与など実際に支払った月の翌月10日までに所定の用紙と共に国に納めなければいけません。
給与を支払う、源泉徴収義務があるフリーランスに関しては、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払った場合にも同じく源泉徴収の義務が生じます。(士業の方々からも徴収しなければいけないってことですね!)
ただ、常時2人以下のお手伝いさん・家事使用人だけに給与・退職金を支払っている場合は源泉徴収をする必要はなく、また、こういった源泉徴収義務がないフリーランスは税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払った場合でも源泉徴収義務はありません。
とはいえ、
源泉徴収義務者ではなくても、ホステス等に支払う報酬等からは源泉徴収をする必要がありますので要注意です。
参考までに、法人の場合も条件は同じですが、実務上、役員報酬を支払うことがほとんどですので、ほとんどの法人が源泉徴収義務者となります。
徴収した所得税を支払うタイミング
上記にも記載しましたが、源泉徴収をしたお金は、次月の10日までに税務署へ支払うのが原則です。
ただ、毎月納付はかなり頻度が高く手間がかかるため、毎月ではなく年2回にまとめて納付できる制度があります。
この制度を「納期の特例」といい、条件は2つあります。
・給与等を支払う人員が10人未満の源泉徴収義務者
・「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出して承認を受ける
こちらの申請書は提出時期は定められていませんが、原則として提出した日の翌月に支払う給与から適用されます。
申請書:http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
この2つの条件を満たした際に特例を受けることが可能です。特例を受けられた場合には
1月から6月までに支払った所得から源泉徴収した所得税=7月10日までに納付
7月から12月までに支払った所得から源泉徴収した所得税=翌年1月20日までに納付
という納付方法でよいので、かなり手間が省けます。
また、納付期限までに納付されなかった場合は罰則として延滞税や不納付加算税などが追加されますので、必ず納付期限までに支払うように気を付けてください!
源泉徴収をするに至った場合に必要な書類
新たにフリーランスで給与を支払います!という場合ですが、フリーランスになるときに「個人事業の開業等
届出書」いわゆる開業届https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htmを税務署に提出していれば提出する必要はありません。ただ、何も出していない場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を給与を支払うこととなってから1カ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。
届出書:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm
まとめ
源泉徴収に関する疑問をまとめましたがいかがでしたでしょうか。
同じフリーランスであっても仕事内容によっては源泉徴収に当てはまらない仕事もありますので、わからない場合は自分で判断せずに税務署や税理士さんへ相談してくださいね!