フリーターに税金は関係ないでしょ?‥いえいえ、そんなことはありません。

 

フリーターでも一定額以上の年間収入がある方なら納税の義務は発生するのです。

 

当然、近年増えてきたフリーランスにも!(ちなみにフリーランスの場合は確定申告によりご自身で所得と税金を算出して税務署に支払うことになります。)この記事では、フリーターにも課される税金と保険料についてご紹介致します。とは言っても、フリーターも個人で支払わなければならない税金や保険料は会社員その他と同じです。

 

基本的な税は所得税と住民税の2つがあり、所得の多さに応じて支払わなければならない金額が変わるだけのことです。

 

もちろん、所得(収入)0の方には所得税も住民税も課されません。

 

フリーターも納めなければならない税金と保険料まとめ

 

1  所得税とは

フリーターの方の場合、多くは一般的な会社もしくは会社に所属する小売店などでアルバイト・パートとして働かれていると思います。その場合収入は給与所得となり、それに対して課されるのが所得税で、毎月の給与から勝手に引かれます。過去に受け取った給与明細をご覧いただくと必ず「所得税」という項目があり、料金がしっかり明記されているはずです。

 

 

ではその所得税の金額はどのように決定されているかといいますと、所得金額に応じて定められている税率で計算されます。ここでは一般的なフリーターの方の給与所得となる下記2通りをご紹介致します。

 

[▼所得税の税率(平成29年度)]

・195万円以下の方: 税率5%、控除額0円
・195万円超え〜330万円以下の方: 税率10%、控除額97,500円
ただし、所得税には誰もに適用される基礎控除38万円と、給与所得者すべてに適用される給与所得控除(65万円〜。※給与所得額に応じて給与所得控除額も変わります。)が設定されています。ゆえに所得税というのは、年間所得がこれら控除額の合計である103万円以下の場合には発生することはなく、この103万円を超えた超過分の所得に対して発生するようになっています。

 

 

しかしこの所得税というもの‥年間103万円を超えた給与所得から発生する税金とは言っても、実際には年初めのお給与からすでに徴収されます。

 

年初めにはまだその年に103万円を超えるかどうか分からないはずだし、税率も変わる可能性があるのに一体なんで?と疑問に思われた方もいらっしゃるかと思います。不思議ですよね。

 

しかしこの所得税というもの、何も去年の給与所得に対して徴収しているものでもなく、紛れもなくその年、当月のお給与額から所得税額を見込みで算出して徴収しているのです。企業からの給与明細に記載されている所得税は仮の金額で、これにもし誤差が出た場合にはその年の年末調整によって多く支払った所得税が返ってくる仕組みになっているのです。

 

 

2 パート・アルバイトで稼ぎすぎは損!?

 

所得税の控除の中に「配偶者控除」「扶養控除」というものがあります。多くの一般家庭では夫が一家の大黒柱となって最も多くの収入をもち家庭を支えていますが、妻も働きに出る共働き家庭も近年増えてきており、中には子供も高校生になると一部社会でアルバイトをすることが可能となります。

 

大学生になれば大抵は生活のため、学業とともに何らかのアルバイトを始めますね。しかし、これらの場合の妻や子供の収入次第ではそれ自体に税金が発生したり、上記「配偶者控除」「扶養控除」を受けることができなくなってしまうのです。

 

 

家族の誰かがパートやアルバイトをする場合、給与収入のみで年間103万円(給与所得控除65万円+基礎控除38万円)を超える収入を得てしまうと課税対象となり、さらには夫(父)の扶養にも入れなくなるというわけです。子供の頃は誰しも大抵親の扶養に入っているものだと思いますが、ある程度成長してパート・アルバイトを始めた際に年間収入が103万円を超えるとその瞬間課税対象となってしまい、親の扶養からも外れてしまいます。

 

それにより親の課税所得が増えてしまうことで所得税が大幅にアップしてしまったというケースがよくあるのです。一般にはよく「年収103万円の壁」と呼ばれたりしますね。

 

筆者の母親も昔パートで働いていた頃、「税金が増えてしまうから働く日数を抑えて仕事してる」といったことをよく言っていました。子供の頃はそうした仕組みがよく分からなかったのですが、今大人になってみると「なるほどね‥」という思いです。

 

 

3 住民税とは

 

所得税と並んでフリーターも必ず支払分ければならないもう1つの税金が住民税です。別名「地方税」とも呼ばれ、厳密には市町村民税と都道府県民税の2つを総称して住民税という名称となっています(地域によっては市県民税とも呼ばれます)。この住民税は所得に応じて課される所得割額(ほとんどの自治体では課税所得の10%程)と、地域ごとに一律で決まっている均等割額を合算して算出されます。

 

 

 

この住民税は所得税と違ってパートやアルバイトの場合はお給与から天引きされないことが多いものです。企業の正社員は住民税も天引きされていることが多いです。天引きされている場合はそれで大丈夫ですが、天引きされていない場合は毎年5月頃にお住まいの市町村から住民税の納付書が届きます。その納付書により一括払いもしくは4回払いでのお支払いが可能となっています。ただし、年間収入が100万円を下回る場合には住民税は発生しません。無料でその地域の住民でいることが可能です。

 

具体的な住民税の金額に関しましては、下記に大まかな計算方法と筆者の住む九州にある一地域の住民税の例をご紹介致します。

 

[▼住民税の計算方法] 課税所得=年間収入ー(給与所得控除+基礎控除+社会保険料控除)
所得割額=課税所得×10%ー調整控除額
住民税=所得割額+均等割額
※基礎控除は33万円。
※調整控除額は多くの場合2,500円です。
※給与所得控除は、年間収入が180万円以下の場合その40%。年間収入が180万円超え〜360万円の場合その30%にプラス18万円。ただし、給与所得控除は65万円に満たない場合は65万円となります。
※ただし一部ケースで例外あります。また、課税対象額が200万円以上となる場合にはこの限りではありません。

 

[▼九州の一地域の住民税の例] (※この地域の現在の均等割額は5,500円です。)
・アルバイトで毎月10万円、年間所得120万円の場合: 翌年の住民税は25,000円
【⇒計算例:課税所得=120万ー(65万+33万+0)=22万円。 所得割額=22万円×10%ー2,500円=19,500円。 住民税=19,500円+5,500円=25,000円】
・アルバイトで月収12万円、年間所得144万円の方の場合: 翌年の住民税は25,400円
・アルバイトで月収15万円、年間所得180万円の方の場合: 翌年の住民税は51,600円
・アルバイトで月収20万円、年間所得240万円の方の場合: 翌年の住民税は約85,400円

 

 

4 フリーターも加入しなければならない健康保険と国民年金保険

全ての国民は親の扶養になっている場合を除いていずれかの健康保険に加入しなければなりません。フリーターの方の場合はその地域の市区町村が運営する国民健康保険に入るのが一般的です。

 

それに対して企業の正社員などは、厚生労働省所管の公的法人-全国健康保険協会が運営する健康保険(社会保険)に入るのが一般的です。ちなみに2016年以降はフリーターであっても下記の条件に合致すれば健康保険(社会保険)への加入が義務付けられました。

 

これまで国民健康保険に加入していたものの下記条件に合致する方は、2016年当時勤め先の企業にて社会保険へ加入のお話が来たのではないでしょうか。

 

ーーー以下
・従業員数501人以上の企業に勤めている。
・1か月の給与が88,000円以上である。
・学生ではない。
ーーー以上

 

これら健康保険の類いは実質的には税金と同様に国民が義務として支払わなければならないものです。もちろんメリットがあり、入っておくことで保険証を所有することができ、病院やクリニック等の医療機関に行った際にはそれを提示することで3割負担で医療を受けることができます。そして肝心の健康保険の保険料に関してですが、国民健康保険・社会保険ともに地域によって保険料率が変わってくるものなので一概には言えないものなのですが下記に例を示しておきます。

 

【▼国民健康保険保険料の例 (※平成29〜31年度の保険料率で算定した全国平均値)】
・39歳以下もしくは60歳以上74歳以下の方で年収100万円の方の場合: 5,073円/月 (60,885円/年)
・39歳以下もしくは60歳以上74歳以下の方で年収200万円の方の場合: 11,982円/月 (143,795円/年)
・40歳以上59歳以下の方で年収100万円の方の場合: 6,290円/月 (75,481円/年)
・40歳以上59歳以下の方で年収100万円の方の場合: 14,598円/月 (175,182円/年)

 

【▼健康保険料(社会保険料)の例 (※平成30年度以降の東京都の健康保険料率9.9%を適用した場合)】
・月収10万円の方の場合(個人負担額): 4,851円/月
・月収15万円の方の場合(個人負担額): 7,425円/月
・月収20万円の方の場合(個人負担額): 9,900円/月

 

国民年金に関しましては20歳以上の国民が必ず加入しなくてはならない制度です。会社員で厚生年金に加入している場合以外は国民年金に加入する義務があります。この国民年金の保険料は年収に関わらず一定額を支払うものになりますので、収入が少ないとかなり厳しい現実があります。
[※参考: 2019年度の国民年金保険料は一人あたり16,410円/月です。]

国民年金加入のメリットといえば‘老後の扶養’とお考えの方は多いと思いますが、国民年金にはそうした「老齢年金」だけでなく、事故や病気で障害を負ってしまったときに受け取れる「障害年金」や、加入者が死亡した場合に配偶者や子供が受け取れる「遺族年金」も含まれています。「老後なんてまだずっと先だから年金なんて払いたくない」という人も居ますが、年金は若いうちに関わってくる可能性も大いにあるのです。保険料を支払っていないとそうした万一の時に年金を受け取れなくなることがありますので、国民年金の保険料は出来る限りしっかり払っておきましょう。もし収入が少なくてお支払いが困難である場合には、お近くの役所で納付猶予もしくは免除の申請ができますので、手続きをして認められればとりあえず負担は軽くなります。‥最後に付け加えますと、そうした手続きをせずに国民年金保険料をずっと支払わないでいると督促状が届くようになり、最後には財産(お給与等)の差し押さえなどにも繋がってしまうという非情なものでもあります。やはり‘義務’ですからね。最低でもそうしたことにはならないように年金事務所などから連絡がきた場合にはしっかりと対応しておきましょう。

 

5 雇用保険は必須

いずれかの企業で働いたことのある方なら「雇用保険」という言葉は聞いたことがあるかと思います。一般企業の給与明細などに普通に書かれているものですからね。この雇用保険というのは厚生労働省が管理しており、その手続きや給付については地域ごとのハローワークが請け負って行っているものになります。雇用保険に入っておくことで受け取れる給付にはさまざまな種類があるのですが、主には次の4種類となります。どれも働く人の生活を守るためにあるもので、いざという時の助けになりますのでできるなら加入しておきたいものと言えます。大手などちゃんとした企業であれば、下記の加入条件を満たす労働者は必ず加入しているものになりますので、毎月の給与明細を確認してみるとよいでしょう。もし雇用保険料の欄に数字が書かれていなければ雇用保険は支払われていないことになりますから、雇い主(店長などの上役)に確認してみることをおすすめ致します。

 

【▼雇用保険〜主な給付の種類】

1、失業した時に受け取れる失業手当の給付(失業保険)
2、出産後に受け取れる育児休業給付
3、介護休業取得時に受け取れる介護休業給付
4、資格取得時などに受け取れる教育訓練給付

 

【▼雇用保険〜2つの加入条件】

1、1ヶ月以上の雇用見込みがある者
2、週20時間以上働く者

 

雇用保険で使われることが最も多いのが「1、失業手当の給付」です。よく言われる失業保険のことで、正式には雇用保険の基本手当といいます。失業時に次の職を見つけるための期間の生活手当と言って良いでしょう。この失業手当の給付額は働いていた年数や辞め方によって幾分変わってきます。

 

具体的には自己都合で退職したケースでは、働いていた期間が1年以上の場合3か月分の失業基本手当を受け取ることができます。働いていた期間が10年以上の場合には4か月分、20年以上の場合には5か月分という風に設定されています。

 

また「2、育児休業給付」は女性が育児休暇を取得した際に是非利用したい保険ですね。

 

「3、介護休業給付」は家族の誰かが介護を必要とするようになったときに使える保険です。主には親の介護が必要になるタイミングが訪れる30〜50代の働く男女に利用する機会が多いものです。

 

「4、教育訓練給付」は失業時給付の1つで、主には再就職のためのスキル取得を応援してくれるもので、厚生労働省の指定する教育訓練講座の受講にかかった費用の一部を支給してくれる制度になります。

 

雇用保険への加入は正社員の場合無条件で義務づけられていますが、パートやアルバイト・派遣社員といったフリーター方の場合には上記2つの加入条件を満たすことで加入対象となります。注意したいのは2、週20時間以上働くという条件です。例えば週3日勤務の方の場合は、1日の労働時間が平均して約7時間以上、週5日勤務の方の場合は1日の労働時間が平均して4時間以上あれば加入対象といえます。

 

そして肝心の雇用保険の保険料に関してですが、これは毎年変わる可能性のある雇用保険料率によって算出されるもので、また事業によっても違ってくるものです。

 

しかし他の保険に比べれば大した金額ではありませんので、雇用保険料に関してはそれほど重要視する必要はないでしょう。ちなみに多くのフリーターの方が勤める小売業など一般事業における雇用保険料率は平成28年度が労働者の課税所得の0.4%、平成29・30年度が労働者の課税所得の0.3%となっています。

 

例えば、平成30年度に小売店に勤めるフリーターの方で課税対象となる月収が12万円だった方の場合の雇用保険料は12万×0.3%=360円/月です。

 

 

結論 〜フリーターでも税金と保険料は毎月これだけかかってくる

 

いかがでしたでしょうか。フリーターの方でも納めなければならない税や保険の種類は企業の正社員とほとんど変わらないことはお分かりいただけたかと思います。

 

主に納めなければならない税や保険は下記5種類です。月収10〜20万円のフリーターの方に必要になってくる大まかな税金と保険料を合わせて記しておきますので参考にされてみてください。

 

1、所得税・・・月に大体1,000円〜3,000円
2、住民税・・・年に大体25,000〜85,000円
3、健康保険・・・月に大体5,000円〜10,000円
4、国民年金保険・・・16,410円/月
5、雇用保険・・・月に大体500円前後

 

上記のうち、「1、所得税」と「5、雇用保険」に関しては大体の場合お給与から勝手に天引きされるものです。「3、健康保険(社会保険または厚生年金保険の場合)」も同様に天引きされます。お給与の手取り額から支払わなければならないのは「2、住民税」と「3、健康保険(国民健康保険の場合)」と「4、国民年金保険」の3つになります。本記事の結論として、

パートもしくはアルバイトをする月収10〜20万円のフリーターの方に毎月必要になってくる税金と保険料は、上記1〜5を合算してひと月当たりに換算してみると非常にざっくりとですが

<毎月3万円前後>

が税金と保険料で消えていってしまうのです。これが現実。一人暮らしの方であればもちろん家賃や光熱費、食費などの生活費がかかってきますから、毎月それらを見越したお給与をいただかないと生活していけないことになります。借金などがあればもちろんその分の返済も上乗せされるのでさらに大変です。

 

今の時代、フリーターの決して甘くはない現実がよくYahoo!Japanのニュースなどでも取り上げられますが、こうした税金や保険料の現実を目にするとその仕組みがよくご理解いただけるのではないでしょうか。

 

何も必ずしも会社に属したり企業の正社員にならなければ余裕をもってやっていけないというわけではありませんが、自分自身を守る意味でもこうした毎月必要なお金に関してはしっかりと把握し、それに対処できる仕事や経済活動をすることで金銭的にも余裕のある人生を歩んでいきたいものですよね。