第162回芥川賞・直木賞が決定致しました。

直木賞には『熱源』の川越宗一さんが受賞になりました。

川越宗一さんですが、昔はバンド活動をしていたりとユニークな経歴の持ち主です。

川越宗一さんマルチで魅力的な経歴と作品を考察してみました。

直木賞受賞の川越宗一さんは元バンドマンでマルチで魅力的な人

川越宗一さんの経歴

1978年、大阪府に生まれた川越さんは歴史に親しみ、歴史学者を志し龍谷大学文学部歴史学科に入学します。

歴史ある龍谷大学とは?

龍谷大学はなんと江戸幕府第三代将軍、徳川家光の時代に当たる1639年、寛永16年に京都の西本願寺境内にて設立された歴史のある大学の一つです

著名な教授を多く抱える伝統に相応しい専門性の高い講義、授業を受ける事が出来ます。歴史学者を目指していた川越さんにとって、さぞ充実したキャンパスライフだったことが窺えるようですが、実は大学時代にバンドにハマり中退してしまいます。

その後はバンド活動を始めてエレキベースを担当しました。

この時点で異色の経歴の気配を感じますが、川越さんの異色さはここでは終わりません。その後就職を目指した川越さんは大手通販社ニッセンに入社します。

こでの仕事内容はと言うと、なんと巷で有名な「ニッセンのスミス」のTwitter担当をされていたのです。先述の松本清張賞の受賞に当たり現在は引退されたそうですが、文学賞を受賞する片鱗が見えるような見えないような、面白い経歴を持っている人物であるには間違いないでしょう。

2018年にツイッター担当を降りています。

その後、「天地に燦たり」で第25回松本清張賞を受賞し、当時はニッセンで働いていたそうです。翌年に出版した歴史小説の「熱源」は第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞、第162回直木賞候補、第22回大藪春彦賞候補になり、そして2020年になって第162回直木賞を受賞して注目されています。

それにしても、歴史小説の2作目で直木賞を受賞しましたが、バンドマンからサラリーマンを経て小説家になるなどユニークな経歴があることが特徴です。

このため、一躍有名になったことで今後の作品も期待でき、3作目がどのようになるか注目されそうです。

川越宗一さんの作品

では川越さんの作品とはどのようなものでしょうか。直木賞を受賞した『熱源』、そして松本清張賞を受賞した『天地に燦たり』、そのどちらもが歴史小説です。あらすじを簡単にまとめてみましょう。

1作品目『天地に燦たり』

『天地に燦たり』は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で翻弄され荒れる東アジアを生きる、日本、朝鮮、琉球、3人の若者の目線から「礼」をテーマに描いた作品です。

琉球や朝鮮、薩摩が豊臣秀吉の朝鮮出兵前後の時代を背景に交錯する物語は、それぞれの人々の考え方や心情を掘り下げ、これまでになかった作品として歴史好きから注目されました。

2作品目「熱源」

2作目の「熱源」が今回の直木賞の受賞作になり、第10回山田風太郎賞候補や第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞にも選ばれて注目されていました。

その作品に関する評価はアイヌ、ロシア、ポーランド、日本を舞台に、明治の終わりから日露戦争や2つの世界大戦と時代に翻弄され続けた樺太を巡る骨太の物語で人々の様子をうまく描かれたことでも感動されているようです。

タイトルの熱源は戦争や理不尽さに屈することがなく生きることを辞めない人たちの様子をうまく表現し、読者が熱意を感じるような内容に仕上がっています。

どちらも実在の出来事、人物を扱っており、歴史学者を志した川越さんらしい知識と、元ニッセンのスミスらしい独自の視点が組み込まれているのではないでしょうか。

『熱源』も『天地に燦たり』も、ロシアの同化政策やロシア革命、北海道の開拓であったり、朝鮮出兵であったりと有名な出来事を題材としながら、そこで大きな活躍をした英雄的人物ではなく、ひたすらに生きる人物像を描き切っています。

どのように生きるかの根源に存在する「信念」を扱う作風と言えるのではないでしょうか。

文学賞でありながら異色の作家も輩出している直木賞ですが、その中でも川越宗一さんは自由気ままさを感じます。その生き方が独自の世界観を生み出し、歴史好きは勿論、そうではない人をも引き付けています。